梅下のとはずがたり

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【ネタバレ含む】不死川実弥・玄弥の考察

不死川兄弟の名前の由来やモデルについて考察をします。

なぜ2人を一緒にやるのかといいますと、考察してみたところこの2人はセットでやらないと意味がないという結論に至ったからです。

コミック最新刊とジャンプ本誌のネタバレをさらっと含みますので、一切知りたくないという方はご注意願います。

鬼滅の刃 17 (ジャンプコミックス)

◆まずは2人のプロフィールから


不死川 実弥(しなずがわ さねみ)
東京府 京橋區(現:中央区 京橋)出身の21歳。
風の呼吸の使い手で最高位である風柱。
体は傷だらけで見た目は粗暴、短気で荒々しい。
鬼は片っ端から皆殺しといった考えの持ち主で炭治郎とは仲が悪く、義勇のことはガチで嫌っている模様。
鬼が好む稀血の持ち主で、その匂いを嗅いだ鬼は酩酊状態になる。
弟を守るために鬼になった母を殺した過去を持つ。好物はおはぎ。
炭治郎の同期 不死川 玄弥は弟だが弟を思うあまり「弟はいない」と冷たく突き放す。

鬼滅の刃 13 (ジャンプコミックス)

不死川 玄弥(しなずがわ げんや)
出身地は兄と同じで、16歳。
炭治郎たちと同期で風柱 不死川 実弥の弟だが、呼吸を使えず銃を使用する。
鬼の一部を「喰らう」ことで、鬼の再生力・怪力などを一時的にコピーすることができる特異体質の持ち主。

これは稀有な能力ではあるが、自我や理性を失うこともあるので、諸刃の剣となる。
鋭い目付き、鼻面を横一文字に走る大きな傷跡、頭頂部以外を刈り上げた髪型が特徴。
趣味は盆栽。


個人的には玄弥の誕生日が火祭の鬼夜と同じ1月7日というのが気になります。
やっぱり鬼を意識しての設定なんでしょうか。
あと同じ16歳なのに善逸とは全然違うなと思います。


◆不死川の由来


漫画で作られたような苗字の印象すらありますが、実在する苗字です。
そのままフジと読ませることもあります。
名前の由来ですが、まず字は静岡県富士川の漢字を変えたものと思われます。
富士川には風の宮(風神宮)があります。
また、フジではなくシナズと読ませているのは、風神 シナツヒコを意識してのことだと思われます。


◆風の神社とおはぎ


風の神社は全国各地にありますが、全国各地にあるならば、きっと吾峠先生は九州を選ぶでしょう。
熊本県 阿蘇市にも風神社があります。
ここの風神社には、あまり聞かない特徴があります。

以下は阿蘇神社HPに掲載されている風宮の神事について書かれたものを一部抜粋して紹介します。

風の神を祀る風宮が宮地地区・手野地区と2ヶ所あり、それぞれ小豆飯が供えられ神事が行われます。宮地地区の風宮の神事が終わると、2人の神職が御幣をかざし、異なる道を通って手野地区の風穴に悪しき風を追い立てます。

ここで読み取りたいのが、阿蘇の風宮は風を吹かせる神社と、吹き飛ばされた悪いものを吸い込む風穴の役割をする神社二つが一つの役割を成すところです。
双子だと一般的に一つのものが二つに分かれた、性質が極めて似ているイメージですが、そうではなく属性は同じでも全く違うものがそれぞれ存在しているいわば兄弟のようなイメージです。


そして、その神事には小豆飯を供えます。
小豆にもち米といえば不死川 実弥さん大好きなもの、おはぎです。
小豆飯がなぜおはぎになったのか。
甘さはキャラクターの意外性を考えて先生がおはぎにしようと思ったのかもしれませんし、後述する別のある事柄が付加された結果かもしれないと考えています。


◆実弥と玄弥の由来


風に実弥と玄弥がどうつながるのか。
私なりに考えてみました。

不死川兄弟には名前の由来となったモデルが存在します。

それは九州の武将 秋月 種実(あきづき たねざね)と、その弟 種冬(たねふゆ 後に大庭 源馬/おおば げんばと改名)です。


秋月種実は反骨精神ある武将で、九州の大部分を支配していた大友宗麟、後には豊臣秀吉にも刃向かいました。

 

大友宗麟といえば、部下に戸次鑑連(立花道雪)がいます。雷神の化身と呼ばれた武将です。
秋月種実は彼とも一戦交え、かなりの打撃を与えました。

秋月種実には風にまつわる異名はありませんが、雷神に対するのは風神という連想で選ばれたのではないかと考えられます。
秋月家の兄 種実を実弥、弟の種冬(源馬)を玄弥としているわけです。


そして、阿蘇神社の風宮に二人の関係を照らすと、実弥は風柱として風を吹かせる者、玄弥は風穴のように悪いものを呑み込む力を持つ者と解釈できます。


玄弥は字がモデルと違う字が使われていますのでさらに考察してみたいと思います。

まず玄の字は、後の名前 源馬の源(げん)と同じ読みで玄冬という言葉にも使われる冬をイメージさせる字です。
字を変えているのは、種冬と源馬 両方の名前も取り入れた名前にしたかったのだろうと考えられます。
そして、玄弥の髪型は作品ではサイドは癖毛で刈っておかないとおかしな髪型になってしまうという説明がなされていますが、この髪型、馬のたてがみに似ていると思いませんか?
これは源馬の「馬」が外見のイメージに反映されているからだと思われます。


また、玄弥は『大江山』鬼退治のメンバー 卜部 季武(うらべ すえたけ)のキャラクターも一部取り込まれているのではないかと考えています。
卜部季武は弓を得意とする人物でした。
大正時代であのとんでもない身体能力を持つ鬼たちに弓はさすがに心もとないので、銃に置き換えられているのではと考えています。


◆秋月家と弥


それでは、実と玄は秋月家の兄弟から由来しているとして、「弥」はどこから来たのかについて考えてみたいと思います。


弥の字自体を調べてみましたが、「いよいよ、ますます」などの意味で、この字も風に深い関連性はなさそうです。
そこで弥を使う単語で真っ先に思い浮かぶ暦の3月の異称「弥生」に由来しているのではないかと考えました。
ですが、そうだとすると弥生と秋月との関連性がどこにあるのかが問題になります。


私はそれを秋月家の家紋から読み解けるのではないかと考えました。


秋月家の家紋は三つ撫子。この撫子は唐撫子(からなでしこ)です。
秋月家の家紋は秋の月に撫子という故地の情景を祈念したものということですが、唐撫子は武家に好まれた図柄でもあります。
中国にてある武将が岩を虎と間違えて矢で射たところ岩に刺さり、この花になったという言い伝えが武道の精神として好まれたからです。
そして唐撫子はその別名を石竹(せきちく)といいます。


ここで3月の異称についてもう一度、さらに詳しく見てみます。3月の異称は弥生だけではなく、他にも桜月、蚕月、夢見月など多くの異称が存在します。
その中の一つに竹の秋という異称があります。
竹は他の木と違い春に黄変することに由来する別名です。


すると、こういう連想が成り立つのです。


「石【竹」の「秋】月」=3月=弥生→弥


つまり弥生の弥1字で秋月家という意味を込めているのです。
実弥と玄弥はそれぞれ二文字の名前でありながら、秋月種実と種冬(大庭源馬)兄弟の名前であると読めるのです。

兄弟が表紙を飾る単行本の色使いが黄色と緑のグラデーションなのもきっと黄変した竹つまり「竹の秋」を意図しての色使いだと私は考えています。


◆実弥が甘いものが好きな理由


秋月種実は秀吉に敗れ、今の宮崎県高鍋に移封されました。島流しみたいなものです。
死ぬ直前まで筑前 秋月に戻りたいと願っていたそうです。
その秋月とは甘木地方。今でいう福岡県 甘木市になります。
好きな食べ物が、小豆飯ではなく甘いおはぎになったのはこのエピソードのためかもしれません。小豆ともち米に先生が甘さを追加したのです。

 

また実弥はかぶと虫を育てるという趣味があるのですが、かぶと虫はサイカチという木の樹液を好むことから別名サイカチ(ムシ)ともいいます。
イカチは「再勝ち」に掛かることから武士に好まれた木で別名カワラフジノキ。鬼が嫌う「マメ」科の植物。痛そうな刺がいっぱい生えてます。
花言葉は「見かけによらず。」なので、花言葉から人物像を意識しての設定かもしれませんが、もう一つ、カブトムシが好む甘い樹液が出る木から「甘木」を連想して設定していると考えられなくもないのです。


というのも、大正時代においてかぶと虫の飼育はちょっと変わった趣味だからです。
かぶと虫の飼育に人気が出たのは怪獣がテレビで人気が出始めた1960年代からです。
江戸時代から鳴く虫やとんぼなどを飼う人は多くいましたが、カブトムシはこの頃まだそんなに人気がないはずです。
そこへカブトムシの飼育が趣味とわざわざ設定しているからには、それなりに理由があるのではと考えています。


◆まとめ


以上、不死川兄弟について考察してみました。

 

・不死川兄弟は設定上、2人兄弟でなくてはならなかった。
・兄弟のモデルは秋月種実と大庭源馬。

 


不死川兄弟は苗字はあまりひねられていなくて、わりとすぐわかったのですが、名前の方の作り込みがすごく凝っていて読み解くのが大変でした。
その難解さは善逸といい勝負で、数日間の悩みは「さねみってなんなのさ」でした。
容易に推測を許さない吾峠先生の作り込みの細かさには脱帽です。


登場時こそ印象が良くない2人でしたが、終盤に近づくにつれてかなり印象が変わったと思います。
特に実弥はあんなに柔らかく笑う人になるとは思いませんでした。
7月には過去を描いた小説も出版されますし、またファンが増えそうだなと思います。


◆参考文献、サイト
・原作『鬼滅の刃吾峠呼世晴集英社出版 掲載紙 週刊少年ジャンプ
・『公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』吾峠呼世晴集英社出版 掲載紙 週刊少年ジャンプ
wikipedia https://ja.m.wikipedia.org/

「戸次鑑連(立花道雪)」

「秋月種実」
「秋月冬種(大庭源馬)」
卜部季武
「カブトムシ」
「サイカチ」
・戦国武将列伝Ω1100記事
「秋月種実~大友氏に真正面から立ち向かった九州の反骨武将~」
https://senjp.com/akizuki-tane/
富士市商工会
「風の宮(風神宮)」
http://fuji-s.or.jp/kankou/archives/spots/kazenomiya
・安蘇神社公式サイト
http://asojinja.or.jp/
・夏貸文庫
「陰暦における月の異称」
http://www.natubunko.net/kotoba01.html

・名字と家紋
・STAG BEETLES
「日本ではいつごろからカブトムシが飼われ始めたのか」
http://kusami.com/stagbeetle/ja/2016/10/22/when-japanese-start-caring-rhinoceros-beetles/

 鬼滅の刃 風の道しるべ (JUMP j BOOKS)

 

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