梅下のとはずがたり

思いつきを長々と語るブログ

【ネタバレ含む】甘露寺蜜璃の考察

 

鬼滅の刃 14 (ジャンプコミックス)

今回は甘露寺さんの考察をしてみたいと思います。 

無惨戦でのエピソードは回避していますが、一ミリも知りたくない人はご注意願います。

◆まずプロフィールから

東京府麻布区飯倉(現:港区麻布台)出身の19歳。

五人兄妹。
炎の呼吸の派生、恋の呼吸の使い手で最高位の恋柱。

鬼殺隊に入隊したのは婚活のため。
常人の8倍の筋肉を持ち、それを維持するため食べる量も相当なもの。
日輪刀は蛇のようにしなるものを使用。

蛇柱の伊黒 小芭内とは文通する仲。

 

関西は京都とかの公家の出かと思っていたら、まさかの麻布出身。

セーラー◯ーンの近所だったという。


甘露寺蜜璃に潜む2つのモチーフ

他の設定などを併せて考えていくと甘露寺 蜜璃の設定は「桃」と「蛇」をかなり意識して作り込まれていると私は考えています。 

日輪刀が蛇のようにしなる形状であることも、作品内で「好物の桜餅の食べ過ぎ」で変化したと言われているピンクと緑色の髪も桃に由来していると思います。

長い三ツ編みの髪も桃と蛇の組み合わせによるものと思われます。

一般的にピンクといえば日本語では桜色ではなくて桃色です。

などと言っても説得力は皆無ですので、桃と蛇のイメージがどこにあるかを具体的に見ていきたいと思います。

甘露寺 蜜璃という名前ですが、甘・露・蜜・璃と全体的に甘くて丸くて瑞々しいイメージだと思います。だから桃と言いたいところですが、甘くて丸いものというだけならメロンでもブドウでもスイカでも、なんなら飴玉でもありではないかという話になってしまいます。

なぜ桃でなくてはならないのか。

桃には鬼と深いつながりがあることは、よく知られていると思います。

たとえば古くは古事記にも桃が登場します。
死んだイザナミを追って黄泉の国へ来たイザナギは、変わり果てた妻の姿に驚き逃げ出します。見るなと言ったのに覗き見た夫の裏切りに激怒したイザナミは、雷神たちと共にイザナギを追いかけます。
イザナギが追っ手を振り払うべく投げつけたのが桃でした。
桃は穢れた存在を祓う神聖な果実として描かれています。

そしてもう一つ、日本でもっとも有名な鬼退治の物語。それは『 大江山』…と言いたいところですが、『桃太郎』です。

鬼を祓う桃、鬼退治の英雄・桃太郎のモチーフ、吾峠先生が使わないはずはありませんが、もちろん桃や桃太郎を初見で読者が見破るようなあからさまな形では使いません。

甘露寺さんの場合、名字に使われている「甘露寺」は全国にいくつかある現存するお寺です。

「鬼のいない浄土」を表現した寺院ではありますが桃とは関係なさそうに見えて「桃山」時代の様式を取り入れた寺院でした。

下の名前、蜜璃には蛇のイメージが潜んでいます。実は璃の字のつくり「离」は、大蛇を表したものなのです。

では、名前以外の他の設定を見ていきます。


◆恋柱と恋の呼吸

お色気や魅力でメロメロにしてしまう能力はアニメや漫画でたまに見かける異能力ですが、恋を力にして戦うのはあまり見たことがないかもしれません。

しかも炎、蟲などと同列で恋が並んでいるのはかなり珍しいと思います。

恋という発想はどこから来ているのでしょうか?

鬼滅の刃』は全国の神社から設定の多くを取り入れていることがわかります。

これを踏まえると、鬼殺隊における最高位を表す階級の名前「柱」とは「神」を意味していると考えられます。

ですが水や風、岩や蛇の神様を祀る神社なら全国各地にありますが、恋の神様で神社とはあまり聞いたことがありません。

これを調べてみたところ、吾峠先生の出身地である福岡県には「恋木(こいのき)神社」があり、「恋命(こいのみこと)」なる神様がいらっしゃるということがわかりました。

全国でもここしかいないと言われています。
神紋もハートで、全体的にピンク色を基調にされているかわいらしい雰囲気の神社です。

ちなみに恋の呼吸の技の名前には猫が絡んでいますが、東京都にある縁結びで有名な今戸神社は招き猫もよく知られていますし、俳句の季語で「猫の恋」というものがあるので、そこから取られているとも考えられます。

甘露寺さんの愛らしさと、そこからは考えられないようなパワフルさと柔軟で不規則な攻撃は恋に悶える猫のイメージも合いそうです。

◆恋柱の裏にある設定

恋の呼吸は恋木神社から得られた着想でしょうが、甘露寺蜜璃そのもののモチーフではなさそうです。 

むしろ、ある縁結びの神社から連想して恋木神社がつながり、恋の呼吸の着想を得てるという流れが正しいのではと私は考えています。


縁結びで有名な福岡の神社は他にもいくつかありますが、鷲尾愛宕神社が関係していると私は考えています。

この神社は日本三大愛宕神社の一つで、火伏せや縁結びで有名かつ歴史ある神社であり、屈指のパワースポットです。

この神社が甘露寺さんの設定に取り入れられている、そう考える最大の理由はその神紋(神社でいう家紋的なもの)にあります。

この神社の神紋は「向かい巴」といって、巴が左右に並んでいます(下図参照)

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鷲尾愛宕神社の御神紋「向かい巴」(よひら画)



巴の模様は陰陽、魂、胎児、いろいろな読み方ができると言われていますが、とぐろを巻いた蛇だとも言われます。向かい巴は二匹の蛇が向き合った形とも読めるのです
それと同時に桃に似ていると私は思うのです。

さらにひっくり返すとハートになり、恋木神社にもつながります。


◆炎柱 煉獄さんとのつながり

恋の呼吸は炎の呼吸の派生であり、甘露寺さんは煉獄さんの継子でもありました。
単に設定としてあるだけでなく、取り入れられたモチーフでも少しつながりがあることが、読み取れると思っています。
煉獄さんの考察において、私は杏寿郎の寿郎は寿老人に由来しているのではないかと述べましたが、その寿老人が手に持っているのがです。
桃をモチーフにしている甘露寺さんの師匠とされる煉獄さんにも桃のモチーフがあって、実はつながっているのです。


◆桃太郎について

甘露寺さんの設定に桃が取り入れられているとわかった以上、桃太郎もモデルの一部として組み込まれているとみるべきでしょう。

昔話の桃太郎の物語自体、地方によってバリエーションがあるのですが、鬼退治ではなく婚活が目的だったとか、香川県には「桃太郎は魔除け的な理由で男の名前をつけただけで、実は桃太郎は女の子だった!」という話もあるそうです。
最近は人化や性別を逆転させる設定も珍しくありませんが、女性に桃太郎の設定を組み入れるのは、素直に資料にあたっていても自然と得られる着想なのです。

「桃太郎」そのものについても少し詳しく見ていきたいと思います。

桃太郎にはモデルとなった人物がいることをご存知でしょうか?
七代孝霊天皇の皇子、その名も彦五十狭芹彦命(ひこいさせりひこのみこと)またの名を吉備津命彦。(これが一般的だと思われますが、四国の香川県では弟の稚武彦命が桃太郎のモデルだと言われているそうです。)
父子そろって鬼退治の伝承を持っています。
ただ、七代孝霊天皇欠史八代の一人で伝説の要素が強い天皇で、それは息子も同様です。
一説よれば彼らは五人兄妹(諸説あります)で、甘露寺さんの兄妹構成と同じです。
彦五十狭芹彦命(吉備津命彦)のどこに桃の要素がと思いますが、倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめ)という姉がいます。
桃太郎は、モモから桃の着想を得たのではないかという説があります。

 

◆桃と蛇を結ぶもの

桃太郎の姉と言われるヤマトトトビモモソヒメ、名前が長いのでモモソヒメと呼びます。
彼女は巫女のような役割を持っていたと考えられ、一説には卑弥呼なのではとも言われています。
卑弥呼かどうかはわかりませんが、巫女としてかなり優秀であったようです。
彼女を伝える三輪山箸墓伝説では神様である大物主の妻であったと言われ、周辺地域では女性の守護者、水神として祀られています。
モモつながりで、モモソヒメも甘露寺蜜璃の設定に採り入れられていると私は考えています。
彼女の両頬のほくろは、古代巫女の化粧や入墨をイメージしてつけられているのではないでしょうか。
そしてモモソヒメは蛇ともつながりがあります。


 三輪山箸墓伝説とおばみつ

モモソヒメと蛇を結びつける三輪山箸墓伝説のあらすじはこんな感じです。

モモソヒメは大物主の妻となったがいわゆる妻問婚で、夫は夜に現れるが朝には帰ってしまい顔がわからない。
ある日、彼女が姿を見たいとせがんだところ夫は「決して驚かないこと」を条件に、朝になったら櫛箱を見るように言った。
箱を覗くと、中には「小さな黒蛇」がおりそれが大物主の昼の姿だった。
彼女は驚いてしまい、大物主はそれを羞じて(あるいは怒り)去っていった。
モモソヒメは秘部に箸を刺して死んでしまった。(びっくりした拍子に箸が刺さった事故死とも、夫に去られたことを悲しみ自ら刺した自殺とも言われる。)

 

蛇柱 伊黒小芭内(いぐろ おばない)と甘露寺蜜璃のカップリング「おばみつ」は原作内でもそれと読みとれる描写があるため、幸せを願うファンが多い組み合わせです。
三輪山箸墓伝説では、二人は死に別れてしまう悲劇的な結末あり非現実的な要素も多々含まれた伝説ですが、モモソヒメが蛇である大物主を愛していたことは読み取れます。
そしてこれが、甘露寺蜜璃と伊黒小芭内のカップリングの原型になっているのではないかと私は考えています。

伊黒さんは常に顔(主に口元)を隠していますし、出自を恥じているため男性としては甘露寺さんのそばにいられないと考えています。

伊黒さんにさらに大物主の要素があるかどうかは、伊黒さんの考察で述べたいと思います。

 

 ◆まとめ

甘露寺蜜璃について考察してみました。

まとめるとこのようになります。

 

甘露寺蜜璃の設定は「桃」と「蛇」の2つのモチーフが隠されている。

•設定に使われている神社は恋木神社と鷲尾愛宕神社

•桃太郎とそのモデルの姉ヤマトトトビモモソヒメも設定に組み込まれている。

 

 悲しい過去を負った人が多い鬼殺隊にあって、明るく笑いかけてくれる甘露寺さんは数少ないほっとできる存在です。いろんな人にキュンキュンしていますが、鬼に対しては「私 いたずらに人を傷つける奴にはキュンとしないの」と言い切る凛とした部分もあり、柱としての強さも持ち合わせています。

甘露寺さんは戦闘シーンでもちょっと和ませてくれたり、平和の象徴みたいなところがあるので、何らかの形では幸せになってほしいなと思います。

 

◆参考文献、サイト
・「公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」吾峠呼世晴  著 集英社出版 掲載紙 週刊少年ジャンプ
 ・pixiv百科事典 https://dic.pixiv.net/
甘露寺蜜璃(かんろじみつり)」
彦五十狭芹彦命(ひこいさせりひこのみこと)」
倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめ)」
・鷲尾愛宕神社公式サイト
恋木神社公式サイト
・浄土宗寺院紹介ナビ
「桃太郎と卑弥呼姉弟?」
「離」
・Japan knowledge  季節のことば
猫の恋

https://japanknowledge.com/articles/kkotoba/18.html

・村屋坐弥冨都比売神社公式サイト

・なら旅ネット
 
 
 
 
 
 

 

 

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