【ネタバレ含む】甘露寺蜜璃の考察
今回は甘露寺さんの考察をしてみたいと思います。
無惨戦でのエピソードは回避していますが、一ミリも知りたくない人はご注意願います。
◆まずプロフィールから
五人兄妹。
炎の呼吸の派生、恋の呼吸の使い手で最高位の恋柱。
鬼殺隊に入隊したのは婚活のため。
常人の8倍の筋肉を持ち、それを維持するため食べる量も相当なもの。
日輪刀は蛇のようにしなるものを使用。
蛇柱の伊黒 小芭内とは文通する仲。
関西は京都とかの公家の出かと思っていたら、まさかの麻布出身。
セーラー◯ーンの近所だったという。
◆甘露寺蜜璃に潜む2つのモチーフ
他の設定などを併せて考えていくと甘露寺 蜜璃の設定は「桃」と「蛇」をかなり意識して作り込まれていると私は考えています。
日輪刀が蛇のようにしなる形状であることも、作品内で「好物の桜餅の食べ過ぎ」で変化したと言われているピンクと緑色の髪も桃に由来していると思います。
長い三ツ編みの髪も桃と蛇の組み合わせによるものと思われます。
一般的にピンクといえば日本語では桜色ではなくて桃色です。
などと言っても説得力は皆無ですので、桃と蛇のイメージがどこにあるかを具体的に見ていきたいと思います。
甘露寺 蜜璃という名前ですが、甘・露・蜜・璃と全体的に甘くて丸くて瑞々しいイメージだと思います。だから桃と言いたいところですが、甘くて丸いものというだけならメロンでもブドウでもスイカでも、なんなら飴玉でもありではないかという話になってしまいます。
なぜ桃でなくてはならないのか。
桃には鬼と深いつながりがあることは、よく知られていると思います。
たとえば古くは古事記にも桃が登場します。
死んだイザナミを追って黄泉の国へ来たイザナギは、変わり果てた妻の姿に驚き逃げ出します。見るなと言ったのに覗き見た夫の裏切りに激怒したイザナミは、雷神たちと共にイザナギを追いかけます。
イザナギが追っ手を振り払うべく投げつけたのが桃でした。
桃は穢れた存在を祓う神聖な果実として描かれています。
そしてもう一つ、日本でもっとも有名な鬼退治の物語。それは『 大江山』…と言いたいところですが、『桃太郎』です。
鬼を祓う桃、鬼退治の英雄・桃太郎のモチーフ、吾峠先生が使わないはずはありませんが、もちろん桃や桃太郎を初見で読者が見破るようなあからさまな形では使いません。
甘露寺さんの場合、名字に使われている「甘露寺」は全国にいくつかある現存するお寺です。
「鬼のいない浄土」を表現した寺院ではありますが桃とは関係なさそうに見えて「桃山」時代の様式を取り入れた寺院でした。
下の名前、蜜璃には蛇のイメージが潜んでいます。実は璃の字のつくり「离」は、大蛇を表したものなのです。
では、名前以外の他の設定を見ていきます。
◆恋柱と恋の呼吸
お色気や魅力でメロメロにしてしまう能力はアニメや漫画でたまに見かける異能力ですが、恋を力にして戦うのはあまり見たことがないかもしれません。
しかも炎、蟲などと同列で恋が並んでいるのはかなり珍しいと思います。
恋という発想はどこから来ているのでしょうか?
『鬼滅の刃』は全国の神社から設定の多くを取り入れていることがわかります。
これを踏まえると、鬼殺隊における最高位を表す階級の名前「柱」とは「神」を意味していると考えられます。
ですが水や風、岩や蛇の神様を祀る神社なら全国各地にありますが、恋の神様で神社とはあまり聞いたことがありません。
これを調べてみたところ、吾峠先生の出身地である福岡県には「恋木(こいのき)神社」があり、「恋命(こいのみこと)」なる神様がいらっしゃるということがわかりました。
全国でもここしかいないと言われています。
神紋もハートで、全体的にピンク色を基調にされているかわいらしい雰囲気の神社です。
ちなみに恋の呼吸の技の名前には猫が絡んでいますが、東京都にある縁結びで有名な今戸神社は招き猫もよく知られていますし、俳句の季語で「猫の恋」というものがあるので、そこから取られているとも考えられます。
甘露寺さんの愛らしさと、そこからは考えられないようなパワフルさと柔軟で不規則な攻撃は恋に悶える猫のイメージも合いそうです。
◆恋柱の裏にある設定
恋の呼吸は恋木神社から得られた着想でしょうが、甘露寺蜜璃そのもののモチーフではなさそうです。
むしろ、ある縁結びの神社から連想して恋木神社がつながり、恋の呼吸の着想を得てるという流れが正しいのではと私は考えています。
縁結びで有名な福岡の神社は他にもいくつかありますが、鷲尾愛宕神社が関係していると私は考えています。
この神社は日本三大愛宕神社の一つで、火伏せや縁結びで有名かつ歴史ある神社であり、屈指のパワースポットです。
この神社が甘露寺さんの設定に取り入れられている、そう考える最大の理由はその神紋(神社でいう家紋的なもの)にあります。
この神社の神紋は「向かい巴」といって、巴が左右に並んでいます(下図参照)
巴の模様は陰陽、魂、胎児、いろいろな読み方ができると言われていますが、とぐろを巻いた蛇だとも言われます。向かい巴は二匹の蛇が向き合った形とも読めるのです。
それと同時に桃に似ていると私は思うのです。
さらにひっくり返すとハートになり、恋木神社にもつながります。
◆炎柱 煉獄さんとのつながり
恋の呼吸は炎の呼吸の派生であり、甘露寺さんは煉獄さんの継子でもありました。
単に設定としてあるだけでなく、取り入れられたモチーフでも少しつながりがあることが、読み取れると思っています。
煉獄さんの考察において、私は杏寿郎の寿郎は寿老人に由来しているのではないかと述べましたが、その寿老人が手に持っているのが桃です。
桃をモチーフにしている甘露寺さんの師匠とされる煉獄さんにも桃のモチーフがあって、実はつながっているのです。
◆桃太郎について
甘露寺さんの設定に桃が取り入れられているとわかった以上、桃太郎もモデルの一部として組み込まれているとみるべきでしょう。
昔話の桃太郎の物語自体、地方によってバリエーションがあるのですが、鬼退治ではなく婚活が目的だったとか、香川県には「桃太郎は魔除け的な理由で男の名前をつけただけで、実は桃太郎は女の子だった!」という話もあるそうです。
最近は人化や性別を逆転させる設定も珍しくありませんが、女性に桃太郎の設定を組み入れるのは、素直に資料にあたっていても自然と得られる着想なのです。
「桃太郎」そのものについても少し詳しく見ていきたいと思います。
桃太郎にはモデルとなった人物がいることをご存知でしょうか?
七代孝霊天皇の皇子、その名も彦五十狭芹彦命(ひこいさせりひこのみこと)またの名を吉備津命彦。(これが一般的だと思われますが、四国の香川県では弟の稚武彦命が桃太郎のモデルだと言われているそうです。)
父子そろって鬼退治の伝承を持っています。
ただ、七代孝霊天皇は欠史八代の一人で伝説の要素が強い天皇で、それは息子も同様です。
一説よれば彼らは五人兄妹(諸説あります)で、甘露寺さんの兄妹構成と同じです。
彦五十狭芹彦命(吉備津命彦)のどこに桃の要素がと思いますが、倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめ)という姉がいます。
桃太郎は、モモから桃の着想を得たのではないかという説があります。
◆桃と蛇を結ぶもの
桃太郎の姉と言われるヤマトトトビモモソヒメ、名前が長いのでモモソヒメと呼びます。
彼女は巫女のような役割を持っていたと考えられ、一説には卑弥呼なのではとも言われています。
卑弥呼かどうかはわかりませんが、巫女としてかなり優秀であったようです。
彼女を伝える三輪山箸墓伝説では神様である大物主の妻であったと言われ、周辺地域では女性の守護者、水神として祀られています。
モモつながりで、モモソヒメも甘露寺蜜璃の設定に採り入れられていると私は考えています。
彼女の両頬のほくろは、古代巫女の化粧や入墨をイメージしてつけられているのではないでしょうか。
そしてモモソヒメは蛇ともつながりがあります。
◆ 三輪山箸墓伝説とおばみつ
モモソヒメと蛇を結びつける三輪山箸墓伝説のあらすじはこんな感じです。
モモソヒメは大物主の妻となったがいわゆる妻問婚で、夫は夜に現れるが朝には帰ってしまい顔がわからない。
ある日、彼女が姿を見たいとせがんだところ夫は「決して驚かないこと」を条件に、朝になったら櫛箱を見るように言った。
箱を覗くと、中には「小さな黒蛇」がおりそれが大物主の昼の姿だった。
彼女は驚いてしまい、大物主はそれを羞じて(あるいは怒り)去っていった。
モモソヒメは秘部に箸を刺して死んでしまった。(びっくりした拍子に箸が刺さった事故死とも、夫に去られたことを悲しみ自ら刺した自殺とも言われる。)
蛇柱 伊黒小芭内(いぐろ おばない)と甘露寺蜜璃のカップリング「おばみつ」は原作内でもそれと読みとれる描写があるため、幸せを願うファンが多い組み合わせです。
三輪山箸墓伝説では、二人は死に別れてしまう悲劇的な結末あり非現実的な要素も多々含まれた伝説ですが、モモソヒメが蛇である大物主を愛していたことは読み取れます。
そしてこれが、甘露寺蜜璃と伊黒小芭内のカップリングの原型になっているのではないかと私は考えています。
伊黒さんは常に顔(主に口元)を隠していますし、出自を恥じているため男性としては甘露寺さんのそばにいられないと考えています。
伊黒さんにさらに大物主の要素があるかどうかは、伊黒さんの考察で述べたいと思います。
◆まとめ
甘露寺蜜璃について考察してみました。
まとめるとこのようになります。
•甘露寺蜜璃の設定は「桃」と「蛇」の2つのモチーフが隠されている。
•桃太郎とそのモデルの姉ヤマトトトビモモソヒメも設定に組み込まれている。
悲しい過去を負った人が多い鬼殺隊にあって、明るく笑いかけてくれる甘露寺さんは数少ないほっとできる存在です。いろんな人にキュンキュンしていますが、鬼に対しては「私 いたずらに人を傷つける奴にはキュンとしないの」と言い切る凛とした部分もあり、柱としての強さも持ち合わせています。
甘露寺さんは戦闘シーンでもちょっと和ませてくれたり、平和の象徴みたいなところがあるので、何らかの形では幸せになってほしいなと思います。
【ネタバレ含む】栗花落カナヲの考察
◆まずはプロフィールから
5月19日生まれ。(正確には胡蝶姉妹と出会った日で誕生日は不明)。
◆胡蝶三姉妹について少し
◆名字の栗花落について
◆弁才天の目
◆カナヲについて
◆炭カナについて少し
◆まとめ
まとめるとポイントは下記のようになります。
•カナヲの設定に使われている神様はイチキシマヒメと弁財天。
•弁財天の中でも墨田区の一ツ目弁財天が意識されている。
•カナヲの名前は金櫻神社のカナヲと読ませたもの。
•金櫻神社は花を意味し、眷属は白い犬と狼。
【ネタバレ含む】煉獄杏寿郎の考察
◆まずプロフィールから
◆煉獄杏寿郎のモデルは?
フリー百科事典Wikipedia
◆杏寿郎の名前の由来
◆煉獄について
◆煉獄杏寿郎の家族の名前
◆まとめ
以上、煉獄杏寿郎について考察してみました。
ポイントをまとめるとこのようになります。
•煉獄杏寿郎のモデルは九州の武将 戸次 鑑連(立花 道雪)。•髪型は能•歌舞伎の猩々や連獅子に由来。•家族の名前にも意味がある。
【ネタバレ含む】嘴平伊之助の考察
あまりネタバレするのは本意ではありませんので可能な限り回避するつもりですが、考察する以上漫画の内容に触れざるを得ないため念のため【ネタバレ含む】を明記しました。
ネタバレNGの方はご注意ください。
そもそも原作を知らない人には全く面白くない話でもあります。
まずはあまり作品内で情報がないためか、掘り下げの少ない伊之助からモデルや名前の由来を考察してみたいと思います。
いの一番とも言いますし。
炭治郎や善逸と違ってモデルが見つからないとも言われることがある伊之助ですが、モデルはいますし、炭治郎や善逸と同じくらい作り込まれているキャラクターである説を世界の片隅から主張したいと思います。
◆まずはプロフィールから
公式ファンブックやpixivを参照しています。
(よくご存知の方もいらっしゃると思いますが、ファンブックはたまに間違ってる箇所もあるみたいですので。。。)
参考文献やサイトは、文末にも詳細をまとめて記します。
◆モデルについて
私は「鬼滅の刃」特に無限城から無惨戦については石見神楽の「大江山」に拠っていると考えていて、その中でも伊之助は坂田公時(金時)にあたると考えています。
なぜ石見神楽かは根拠はありますが、次回以降に譲って今回は省きます。
坂田公時(金時)といえば天然パーマに悪い奴は…ではなく、幼名 金太郎が有名な伝説の人物です。
そして、神様と仏様からも着想を得ていると思います。
◆坂田公時(金時)と伊之助
坂田公時(金時)については実在を含め諸説ありますが、wikipediaを参考に、一般的な伝説を簡単に記します。
ポイントを箇条書きするとこんな感じです。
・山で母に育てられる。
・成長して頼光四天王の一人となる。
・酒呑童子と呼ばれた鬼を退治した。
・愛刀の名は「浪切」。
・後に九州に向かう途中に病で亡くなった。
・死後は栗柄神社に祀られた。
母子家庭だった、成長して武装集団の仲間になった、鬼を退治するなど、重なるものがあります。
坂田公時は、一般的には母子家庭とされていますが、別の説では山姥に育てられたという話もあります。
藤の家のひさおばあさんに弱いという設定は、ひょっとしたらこの話を意識しているのかもしれません。
かなり個性的な印象を与えている被り物をしているという外見の設定は、神楽から取り入れられたものではと考えています。
というのも、石見神楽「大江山」での坂田金時は、その成長ぶりをアピールする見せ場があるのですが、それがお面を取るという動作なのです。
鬼退治を経て、彼は少年から大人になるわけです。
ちなみに髪型は変えられないので、おかっぱみたいなままです。
伊之助はおかっぱではないですが、肩までかかるやや長髪の髪型で少し似ています。
神楽のように、いつかその成長を見せる場面で伊之助が猪の皮を自ら取ることがあるかもしれません。
◆嘴平の嘴はどこから?
次に名前の由来を考えていきたいと思います。
「鬼滅の刃」の吾峠先生はストレートに名前をつけない傾向があり、たとえば花の呼吸を使うから花村とか、風の呼吸を使うから風祭とか、坂田金時をモデルにしてるから坂田とか、そういうわかりやすい名前の付け方はしていません。
だからこそ、意味がわかったら(と思われる時は)とても面白いです。
では伊之助の場合はどうなのかというと。
まず、嘴平(はしびら) ですが、この漢字を使った苗字は存在しないようです。
読み方が似たもので橋平(はしひら)はあります。漢字の雰囲気でいうと鳥平(とりひら)という苗字もあります。
ですが、嘴(くちばし)に平(ひら)という組み合わせは存在しない、つまりここに吾峠先生の意図があると見るべきでしょう。
まず気になるのは、名字でも文章でもあまり見かけることのない「嘴」の字です。
第一印象として、鳥なの?と意外に思ってしまいます。伊之助のイメージであれば、獣の呼吸の使い手やその動きから四足獣をイメージする漢字を持ってくるかと思いきや、なぜか名前には鳥をイメージする字が使われているのです。
これは伊之助をモデルにしている坂田公時の経歴を見てみると、一つの答えが導き出せると思います。
先述の通り、坂田金時が祀られているのは栗柄(くりから)神社です。
この栗柄とは、倶利伽羅(くりから)を意味しています。
倶利伽羅と言うのは、倶利伽羅竜王のことであり、不動明王そのものです。
不動明王の姿ですが、青い肌で後ろに炎の神鳥 迦楼羅(かるら/ガルーダ)を背負い、倶利伽羅剣を持った姿で表現されています。
その像などを見ますと、背後を飾る炎は迦楼羅を示す鳥の姿あるいは鳥の頭になっているものがあります。
嘴平の嘴はこれを意味しているのです。
(★申し訳ありません。できればわかりやすい像の写真を入れたいのですが、今のところちょうどよい手持ちの写真がありません。コロナ禍が終息すればきっと)
不動明王自身は青い肌が特徴的で、上半身が裸です。これが皮膚感覚に優れ上半身が裸という伊之助の設定に結び付いたのではないでしょうか。
◆嘴平の平とは?
嘴は良いとして、平は何なのか?という疑問が残ります。
これは決定的な答えを見ませんが、吾峠先生は伊之助の苗字を決めるにあたり、鳥平と平橋という苗字を候補にしていたのではないか、と私は想像しています。
平橋は天満宮や天神社にある三つの橋の一つで、過去・現在・未来のうち現在を表す橋であり、
また傍には琴柱(ことじ)という灯籠もあります。
母・琴葉の名前と関連があるかもしれません。
この橋を渡る際は決まりがあります。
「振り返ってはいけない」のです。
猪突猛進を旨とする伊之助にぴったりですが、平橋と付けたのではそのまますぎます。
そこで橋平とし、橋を鳥の一部である嘴の字をあて、嘴平としたのではないかと。
ところで、不動明王は仏様です。
なぜ天神信仰、つまり神様を祀る天満宮のモチーフがいきなり出てくるのかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。
これは作者の出身地、九州は福岡県に答えがあると考えられます。
太宰府天満宮ではかつて仏の三位一体像として不動明王が祀られていたのです。その不動明王の髪型はおかっぱみたいなやや長めの髪です。
(現在は歴史的な事情により大興寺に安置されているそうです。)
◆ 伊之助の日輪刀
不動明王と坂田公時から読み取れることがまだあります。
それは伊之助の日輪刀についてです。
伊之助の刀はわざと欠けさせてガタガタしていますが、ノコギリみたいなギザギザではなく、大きく欠けてどこかナミナミした感じに見えます。本人いわく「ちぎりさくような切れ味」らしいので、おそらくギザギザに切られるのだと思います。(痛そう。)
そして二刀流です。
不動明王の特徴は倶利伽羅剣を手にしていることです。
倶利伽羅剣とは、竜が絡み付いた「両刃の剣」です。
さらに別にモデルになったと考えられる坂田公時(金時)の愛刀は「浪切」という名前でした。
この二つの要素が組み合わさった結果、伊之助は「ナミナミに刃の欠けた、あるいはナミナミに切られる刀」を使う「二刀流」の剣士という設定になったと考えられるのです。
また日輪刀の色は藍鼠色ですが、これはひょっとしたら嘴から鳥のイメージを連想して、五位鷺(または青鷺)の色を取り入れたのかなと考えています。
伝説で鳥の王とも言われていますし、炭治郎たちとのバランスもあるかもしれませんが、イメージカラーが青の伊之助に合いそうです。
ただ、夜烏とも呼ばれており鳴き声はきれいではなさそうなので、伊之助の声が美声でないのは
ここから由来しているのかもしれません。
◆伊之助が猪である理由
次に伊之助という下の名前について考えてみます。
猪の皮を被っているから、いのすけなんだろうというのはもっともなのですが、そこで猪の字をそのまま使って、猪之助とストレートにつけないところが吾峠先生の名付け方なのかなと思います。
そもそも、なぜ伊之助は猪なんでしょうか。
伊之助の出身地とされている大岳山は御嶽山に連なっており、そこには武蔵御嶽(むさしみたけ)神社という神社があります。
この神社は狼を祀っており、近くの山が出身地であるならば、この神聖で猛々しい狼イメージを採り入れてもかっこよかったでしょうし、金太郎つながりなら真っ先に思い浮かぶのは熊ではないでしょうか。
柔軟性なら猿とかでも良さそうです。
熊ではなく猿でも狼でもなく、なぜ猪なんでしょうか?
私はこれも倶利伽羅のキーワードで読み解けるのではと考えています。
倶利伽羅に繋がりのある神様がいらっしゃいます。通称・蔵王権現です。
その正式な御名前は、倶利伽羅 金剛蔵王権現。
先述の武蔵御嶽神社にも、この蔵王権現が勧請されています。
蔵王権現は日本独自の神様とされていますが、青い肌、倶利伽羅剣、背中に炎を背負う外見はインドの仏教を由来とする不動明王とそっくりなのです。
不動明王もその別名に金剛不動明王という名前があり、金剛という言葉が共通しています。
金剛とは堅い・最勝などの意味です。ざっくりいうと強いってことですね。
私は、この「金剛」が伊之助が猪たるキーワードになると考えました。
この金剛の名を持つ仏様に、金剛面天という仏様がいます。天は仏様の位でいうと明王より下位の仏様です。
金剛の面を持つ天。ではその金剛面とはいかなるものか。この金剛面天には別名があります。
その名も猪頭天。
そう、猪の頭をしているのです。
金剛面とは猪面なのです。
つまり、金剛=猪=すごく強い!
山育ちだからとなんとなく猪が選ばれたのではなく、ちゃんと由来と意味があるのだと私は思います。
◆鬼夜と猪頭の輪郭
これは印象に過ぎませんが、福岡で催される日本三大火祭の一つ、鬼夜に登場する褌姿の男性陣や赫熊(しゃぐま)を彷彿とさせると個人的に思っています。
特に赫熊、これは子どもたちが演じるのですが、藁で作った被り物が猪みたいな形なのです。
吾峠先生は福岡出身ですので、鬼夜はよくご存知のはず。というか作品のテーマの一部になってるとすら考えています。
赫熊の輪郭が先生の意図あるいは意識の中にあったのかもしれません。
◆まとめ
ポイントをまとめると下記のようになります。
•伊之助のモデルは坂田公時(金時)。
•倶利伽羅をキーワードに不動明王と蔵王権現も設定に使われている。
•かぶるものが猪になったのは、思いつきではなく理由がある。
吾峠先生が今後たとえば連載終了後などに、キャラクターの解説などをしてくださらない限り、どのように考えていたとしても、そのほとんどの設定は作品の中で登場することはありません。
ですが、吾峠先生は一人一人の人物設定を丹念に調べられた上で、ものすごく作り込んでいるのではないかと私は思いました。
さらに先生の凄いところは、それを巧妙に隠して容易に見せないところだとも思います。
伊之助を構成したと思われる人物や神様や仏様をまとめると、困難を前にしてもひたすらに前進して成長していく、そういうキャラクターが設定の時点から意識され、強い思いを込めて作られていることが物語の外からも読み取ることができます。
伊之助は人の世界で何となく「こんなもんだろう」とか、「当たり前」だと思っている価値観がなくて、鬼殺隊に入隊してから自分の感覚で掴みとっていく、たまに掴めていないところもかわいげがあり魅力的なキャラクターです。
無惨戦に突入してからは困難にぶち当たることが多く、なんだかよく泣いていますが(意外と泣き虫。)
柱になるところが作品中で見られるかどうかはわかりませんが、個人的には野獣柱、猪柱よりは獣(シシ)柱あたりを作品内でキャラクターの誰か提案してくれたりしないかなと願っています。
今後の成長が楽しみです。
◆ 参考文献、サイト
・原作「鬼滅の刃」吾峠呼世晴 著 集英社出版 掲載紙 週刊少年ジャンプ
・「公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」吾峠呼世晴 著 集英社出版 掲載紙 週刊少年ジャンプ
・石見神楽公式サイトhttp://iwamikagura.jp/
・秋の夜長に勝手に石見神楽を解説しようじゃないか。
http://iwamikagurawota.hatenablog.com/
・wikipedia https://ja.m.wikipedia.org/
「坂田公時(金時)」
「倶利伽羅剣」
「不動明王」
「蔵王権現」
「迦楼羅天」
・大興善寺公式サイト
https://daikouzenji.com/
・武蔵御嶽神社公式サイト
http://musashimitakejinja.jp/
・成田山深川不動堂公式サイト
http://fukagawafudou.jugem.jp/?eid=768
・神魔精妖名辞典https://myth.maji.asia/ko.html
「金剛面天」
・pixiv百科事典 https://dic.pixiv.net/
「嘴平 伊之助」
・Petpedia
「ゴイサギはどんな鳥?特徴や生態を紹介」
https://petpedia.net/article/745/night_heron
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「鬼滅の刃」の考察をしてみよう その前に
何でそんなこと思い立ったのか。と方向性
それなら自分でやればいい。
というわけで、自分なりの考察をしてみることにしました。梅の木の下で
はじめまして。
四葩(よひら)といいます。
いつのまにか静かな春が過ぎ、暦に対する実感が湧かないまま初夏の連休が訪れました。
外出を控えて、せっかくだから日頃できない大掃除でも、と言いたいところですが、
これといって何もしていないのが現状です。
時間がないと何もできないが、時間があってもやりたくないことはある。
ですが在宅しなければならないのなら、その時間を積極的に楽しむ何かがしたいというわけで、ブログを始めることにしました。
思いつきで始めたのでいろいろ勉強しながらになりますが、のんびりやっていくつもりです。
ブログタイトルの「梅下のとはずがたり」は、「梅の木学問」に由来しています。
梅の木は生長が早いが大木にはならないことから、にわか仕込みで不確実な学問、進みは早くても大成しない学問を言います。
当初は漫画の考察をしたいと思っているのですが、何せ梅の木学問ですのでこんなことをいう奴もいる、くらいの気持ちで楽しんでもらえたら幸甚です。
梅の木の下に座って、誰に語るでもなく長々ひとりごと。
そういうブログにしたいと思います。
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