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【ネタバレ含む】煉獄杏寿郎の考察

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今秋公開の映画予告で主役に近い存在感を放つ炎柱 煉獄杏寿郎について考察してみたいと思います。
映画で公開予定の内容が含まれます。NGの方はご注意願います。
 

◆まずプロフィールから

煉獄 杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)
炎の呼吸の使い手で、階級最高位の炎柱(えんばしら)
東京府荏原郡駒沢村(現:世田谷桜新町
趣味は能や歌舞伎、相撲観戦。
好きな食物:さつまいもの味噌汁
十二鬼月上弦の参との壮絶な戦いの末、絶命。
享年20歳。
炎柱は現在、空座となっている。
 
さつまいもの味噌汁と聞くと個人的には九州 薩摩がまず浮かびますが、なんと世田谷出身でした。
世田谷には桜神宮という火伏せの神社があり、かの西郷隆盛とも縁があるそうです。
薩摩のイメージはそこに由来しているものと思われます。
 

◆煉獄杏寿郎のモデルは?

煉獄杏寿郎には実在したモデルがいると私は考えています。
それは九州の武将・戸次 鑑連(立花 道雪)(べっき あきつら/たちばな どうせつ)(1513~1585年)です。

 

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戸次 鑑連(立花 道雪) 福岡県柳川市福厳寺所蔵(出典:Wikipedia
フリー百科事典Wikipedia
彼の肖像画を見た瞬間、私は確信しました。
煉獄さんにはモデルがいて、それはこの武将に違いないと。
髪の毛は全然違いますが、特に目が特徴的で、煉獄さんの目にそっくりです。
落ちてきた雷に斬りかかったというエピソードがあり、雷神の異名を持っていました。
肖像画で印象的に使われている赤い色は雷神をイメージしてのことかと思います。
火神→炎柱のキャラクターとして考えられても不思議ではありません。
名前が二つあるのは少々事情があり、家庭に問題を抱えていた煉獄さんと重なるものがあります。
九州最強の武将とも呼ばれる立花宗茂は娘婿です。
宗茂を迎えるにあたって、かなり粘り強く交渉した(と言うより無理を言った)話が残っていて、人の話を聞いてそうで聞いてない雰囲気を感じとりました。
このあたりも煉獄さんとよく似ています。
 

◆杏寿郎の名前の由来

名字は後回しにして、まず杏寿郎から読み解いていきたいと思います。
まず杏寿郎の杏の字について考えてみます。
杏と言えば杏林などの医療系が浮かびますが、そのような要素は煉獄さんにはなさそうです
戸次 鑑連(立花 道雪)も医療と特別な関係はなさそうです。
そこで家紋を調べてみました。
家紋を調べた理由は、吾峠先生は漫画家ですので図や絵といったものから発想を得ることがあるのではないかと考えたためです。
立花家の家紋は仕えていた大友家ゆかりの「大友抱き花杏葉」と言います。
杏寿郎の杏は、立花家の家紋から取られていると考えられるのです。

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大友抱き花杏葉(出典:名字と家紋_column)
名字と家紋
寿郎ですが、杏寿というような熟語が見当たらなかったことから、少々ストレートな名付け方にも思われたのですが、寿老人に由来しているのではないかと考えています。
寿老人といえばもちろんあの七福神の一柱です。
理由は二つあります。
一つは髪型と色につながる要素があること、もう一つは継子(つぐこ)であった甘露寺 蜜璃とのつながりが見出せるからです。
二つ目の理由については甘露寺さんの解説時に譲るとして、今回は一つ目の理由である髪型について述べていきます。
寿老人とは鹿を引き連れ桃を持つ、その名前の通り長寿にまつわる神様ですが、ものすごく似てる神様が七福神の中にいることをご存知でしょうか?
福禄寿といいます。
ご利益や名前の寿が重複していることもあってか、よく知らなければ正直どっちがどっちなのってくらいイメージが似通っている部分があります。
これを気にする場合、寿老人は別のものに差し替えられることがあるそうです。
それが、猩々(しょうじょう)という架空の動物です。
能にも「猩々」という演目があり、真っ赤でもっさりした長髪が印象的です。
歌舞伎の「連獅子(れんじし)」もよく似ています。
 

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歌舞伎『連獅子』(出典:Wikipedia
フリー百科事典Wikipedia
猩々は日本では能のイメージから大酒家や赤色を意味することもあるそうですが、中国では黄色とも言われているそうです。
この特徴が組み合わさった結果、赤や黄色の髪色にたっぷりした長髪で獅子のような髪型ができあがったのではないかと考えられるのです。
煉獄さんの趣味に能や歌舞伎の鑑賞が入っていることも、これが無関係でないことを示唆していると私は思います。
 

◆煉獄について

煉獄は名字では使われていませんが、名詞で存在している言葉なので、Wikipediaを参考に本来の意味を簡単に言うと、「キリスト教(カトリック)で説かれる天国と地獄の間にあり、死者の魂を火で浄化する場所」です。
炎柱なので火のイメージは納得ですが、火にまつわる名前なら不知火(しらぬい)とか秌場(あきば)とかでも良さそうなところを、煉獄がなぜ選ばれたのか気になるところです。
この名字の煉獄についても、家紋で説明ができると私は考えています。
立花道雪の家紋は先述の通り「大友抱き花杏葉」ですが、子孫はこの家紋を使用していません。
子孫が後に使っているのは「祇園守紋」という家紋です。

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祇園守紋(出典:名字と家紋_column)
名字と家紋
この家紋は隠れキリシタンの家紋とも言われていて、真ん中の十字が十字架を意味していると言われています。
キリスト教」で「火(炎)」に関係する名詞から「煉獄」という名詞が選ばれたのではないかと思います。煉獄は人の罪を火で清める場所。炎の呼吸の使い手は、人であった鬼の罪を炎で焼き尽くし、あの世へ送る者というイメージではないかと思います。
 

◆煉獄杏寿郎の家族の名前

母・瑠火(るか)さんはキリスト教のイメージからとられたのでしょう。
聖ルカは医者だったそうです。
煉獄杏寿郎の杏は中国では医者を表す言葉にもなるので、それを意識しての名付けだと思います。
弟の千寿郎(せんじゅろう)くんは寿郎に合わせてつけたのもしれません。千寿という言葉がありますし、医療関係で千杏という言葉もあるようなので兄弟として意識してつけられたのかもしれません。(千杏会とか、千杏という名前のお医者さんがいるのはわかったのですが、ネットの限界でこの単語の意味は調べきれませんでした。やはり本を見なければだめか。)
 
そして父・槙寿郎(しんじゅろう)さんですが、植物というつながりで杏と関係はありますが、槙そのものに意味があると私は考えています。
植物における槙(マキ)とは、コウヤマキをホンマキと呼ぶのに対し、ただのマキというとイヌマキという質の良くないマキを指すそうです。
まるで、自分は本当の槙ではなく出来損ないの偽物だとでもいうように。
炎の呼吸は日の呼吸のまがいものという意識に苦しむ父・槙寿郎の人物像をうまく表している名前だと思います。
 

◆まとめ

以上、煉獄杏寿郎について考察してみました。

ポイントをまとめるとこのようになります。

 

•煉獄杏寿郎のモデルは九州の武将 戸次 鑑連(立花 道雪)。
•髪型は能•歌舞伎の猩々や連獅子に由来。
•家族の名前にも意味がある。

 

その存在感、強さから長きにわたる活躍が期待されたであろう炎柱・煉獄杏寿郎の早すぎる死は大きな衝撃でした。
こういう強そうなキャラクターって途中で死ぬとしても普通もう少し最終戦近くまで生きているものだと思っていましたが、私の読者予想はあっさり覆されてしまいました。
しかし、その志は最終戦でも仲間たちの中に生きていて、何度も炭治郎たちを鼓舞しています。
生きて活躍することがなくても他のキャラクター同様、その家族までしっかり作りこまれていることがわかります。
作品からは見えないところまでも作り込まれているからこそ、登場人物に深みと立体感を感じられるのでしょう。
 
今秋の映画での活躍が楽しみです。
 
◆参考文献、サイト
・「公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」吾峠呼世晴  著 集英社出版 掲載紙 週刊少年ジャンプ
「戸次 鑑連(立花 道雪)」
「煉獄」
「連獅子」
「寿老人」
「猩々」
・お役立ち!季節の耳より情報局
立花道雪の家紋「大友抱き花杏葉」を解説!雷神と呼ばれた大友家の戦国武将」
・苗字と家紋
「杏葉紋」
祇園守紋」
・立花家資料館スタッフBLOG
「特別展のみどころ―宗茂の家紋―」
・古式神道 桜神宮公式サイト
・映画.com
 

 

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